アメリカから遅れること20年ほど、ようやく日本でも”インサイドセールス”という言葉が使われる様になってきました。

ただ、明確な「定義」が無いため、捉え方は人によって様々であるということが現状です。

 

「テレアポ」の別の名称と捉える方もいますし、営業と同じ様に売上を数値目標として掲げた職種と捉える方もいます。もちろん正解や不正解はありません。

そのうえで、あえて言うなら、日本語に直した時の「内勤営業」が表す様に、電話やメールを使い、社内で顧客や見込み客に営業活動を行うことを指すことは共通しています。

いずれにせよ、企業によってインサイドセールスの適切なミッションや、それに紐づく役割は異なります。

 

ここでは、30年以上BtoBマーケティングを支援し、さらに2018年度には1年で30社以上のインサイドセールスの"内製化支援"を行ってきた弊社の見解やノウハウをお伝えしていきます。

弊社では、いずれのミッションや役割にせよ、「営業プロセス全体の生産性向上と最適化のために、社内で営業活動を行う職種」と位置づけています。サービスの特性や会社の特徴によって、どこまでを担い、どんな手段を用いるかは変わってくるでしょう。

このページでは、まずはインサイドセールスの、役割と現状をご紹介いたします。



目次


1.    インサイドセールスが担う役割の例

2.    なぜ、インサイドセールスが注目を集めているのか

3.    インサイドセールスを取り巻く市場感(市場調査の発表)

 


1.インサイドセールスが担う役割の例


インサイドセールスの本場であるアメリカでは、すでにフィールドセールスよりもインサイドセールスに従事する人材の方が多くなっています。下記の図をご覧頂くと分かるように、フィールドセールスは年々減少していますが、インサイドセールスは増加しています。

 

参照元:Inside Sales Growing 300% Faster Than Traditional Field Sales
http://smartcalling.com/inside-sales-growing-300-faster-than-traditional-field-sales/

 

アメリカにおいてインサイドセールスが広まった理由は、国土が広く移動手段に費用と時間がかかること、通信コストが安いことなどが挙げられます。また、マーケティングに活用されるIT技術の普及により、訪問と同じようなレベルでの営業活動が非対面においても可能になったことも、理由の一つだと考えられます。

ではインサイドセールスの活用シーンにはどの様なものがあるのでしょうか。

ここでは3つ例をご紹介します。

 

a.通常営業活動の一部をインサイドセールス化

フィールドセールスを行う営業マンが、Web会議システムなどのデジタルのコミュニケーション手段を活用し、顧客とのコミュニケーションプロセスを非対面で行っていくことを指しています。

これにより訪問前提であれば一日2~3件の商談しかこなせなかったものを、移動時間や移動経費を削減しつつ、その量を増やすことができるのです。

一方で契約や重要キーパーソンとの面談など、訪問することが重要なファクターになる活動については、引き続き訪問して行います。

この場合はインサイドセールスの組織を作るのではなく、通常のフィールドセールスにインサイドセールスのスキルと文化を移植することになります。

b. 簡易で低単価な商材のクロージングまでのインサイドセールス化

低単価な商材で、比較的商品の訴求が簡易なものは、商談発生からクロージングまでを一度も訪問せずに完結させる企業も多いです。

多くの場合、差別化や訴求ポイントが明確な商品サービスサイトを作成した後で、SEOや広告などで流入を増やし、マーケティングオートメーションなどを活用して、顧客の興味喚起を行います。

そして顧客からのインバウンドの問い合わせや、ホームページへのアクセス・ダウンロードなどから、電話やメールによるアウトバウンドを行い、そのまま受注までの活動を行います。

SMB(小規模企業)がターゲットで、広い地域に対象見込み客が存在する場合や市場獲得のスピードを上げたい場合などに行われます。

ただ商材によってはこの手法ではクロージングまでなかなか結びつかないケースもあります。また、受注までの成功シナリオを開発し、それを多くの人材ができるように一般化・標準化するノウハウが必要になります。

この場合は、基本的にその商材に関わるすべての営業組織がインサイドセールス化します。

c.営業との分業化によるインサイドセールスチームの導入

最終的に受注に至るプロセスにおいて、営業マンの訪問が必要だと考えられる商材の場合です。

例えば、高額なシステム導入や、顧客の中でも多くのキーパーソンとコミュニケーションをとりながら導入をすすめていくソリューション型のサービスが当てはまります。

 

この場合、受注に導くために、営業マンには、高度な専門知識や経験、企画力などが求められます。そういった高度なスキルのある営業マンが、営業の前段階である見込み客の発掘や育成を行うことは、非効率です。

こういった時は、営業の前半部分の工程を分業し、そのプロセスをインサイドセールス化するケースがあります。

 

この場合はフィールドセールスとインサイドセールスの組織が両方存在します。その組織同士が連携しコミュニケーションをとりながら全体としてのミッション達成に努めることになります。
 

ここでの特徴は、いわゆる「アポ取り部隊」と認識されるケースが多いことです。

いろいろと定義はありますが、「アポ取り部隊」は、おもに電話だけを使って、営業マンが訪問できる行先をつくることが目的です。もちろんそのあとは営業マンにお任せとなります。

そのため、アポイントの品質はバラバラで、商談化率や受注率もコントロールしづらいです。

これでは結局、営業マンの受注につながらない活動だけ増えて、かえって生産性を低下させる要因にもなりえます。


きちんと分業化されたインサイドセールスは、見込み客を育成し、商談化や受注させることが目的になります。つまり、営業マンに提供するリードの基準は明確化されます。なぜなら、受注成果に一定の基準で結びつくようなリード情報を提供することが目標だからです。リードの基準には、キーマン情報や予算、導入時期、本質的なニーズなどが含まれることが多いです。

他の記事で紹介しますが、受注や商談につながらなかった顧客との、リレーション構築や啓蒙・育成も役割となってきます。


従来の営業スタイルとインサイドセールス導入後の比較




2.なぜ、インサイドセールスが注目を集めているのか


では、そもそも、アメリカほど国土が広いわけでも無い日本で、なぜ今インサイドセールスが注目を集めているのでしょうか。大きく3つの理由がかけ合わさっています。

①    優秀な営業人材の確保が難しくなっている。
②    働き方改革によって、長時間労働がNGとなった。
③    購買手段が、デジタルにシフトしている。

 

①    優秀な営業人材の確保が難しくなっている。

総人口の減少、少子高齢化、労働人口の減少、これらは昨今どのメディアでも言われているくらい自明なものとなっています。

総務省が発表している、平成30年版の情報通信白書の中では、15歳~64歳のいわゆる「労働人口」は、2017年には7,596万人です。それに対し、2040年には5,978万人となる推定です。つまり20年少しで、20%以上も減少する計算です。

総人口に占める労働人口の割合も、2017年の60%から、53.9%となる見通しで、およそ半数が労働人口以外となります。

 この様に、そもそも労働人口の絶対数が減少します。そのため優秀な人材の割合が変わらない、もしくは少し増えたくらいだと、優秀な人材自体の数も減ってしまいます。

さらに新卒の多くは、クリエイティブ職を希望する傾向にあり、営業希望は少ないという調査もあります。

 

②    働き方改革によって、長時間労働がNG

①    で優秀な人材が減り、結果的に人材確保が困難になることは明白になりました。

今までは、人数が減った分、今いる人たちがさらに「長時間」働くことでカバーすることもできました。しかし、働き方改革の施行によって、そのカバーの方法は不可能になりました。

 量でカバーできない以上は、”質”である生産性向上しか、売上向上のための手段はないのです。そのため、生産性向上に寄与するインサイドセールスに注目が集まりだしました。

 

③    購買手段が、デジタルにシフトしている。

 また今ほど、IT、テクノロジーが発達していなかった時代では、購買の検討にあたり、営業がが持ってくる情報が重宝されました。しかし、今はWEBサイトやSNS等で、誰でも簡単に、最新の情報を手に入れることができます。そのため、以前なら効果があったかもしれない、飛び込み訪問や、代表電話へのテレアポも、今は全く効果がないどころか、業務の邪魔になっています。

 実際にBtoBであっても、約7割の顧客は営業と会う前に、購買意思を固めていると言われています。ただ、一方で自社提案時に受注に至らなかった顧客の内、8割程度は2年以内に、他社と契約するという調査結果もあります。

 つまり、検討中の顧客へのタイミング良いアプローチと、将来の顧客との定期的な接触が重要となります。反対に、不要時に、提案を行おうとする営業電話や訪問は、嫌われてしまい、将来の利益を損ねていると言えます。

 そのため、デジタルテクノロジーを駆使して、提案と育成や関係構築の分業ができる、インサイドセールスに注目が集まっているのです。

 


3.インサイドセールスを取り巻く市場感

-市場調査の結果-


それでは、ここからは市場調査から、インサイドセールスを取り巻く現状をご紹介します。(調査結果から抜粋しているので、一部データは非開示)

ここでは、インサイドセールスはどの程度導入されており、どんな職務が割り当てられて、実際にどの程度成果が出ているのかをご紹介します。

 

具体的には、インサイドセールスに取り組んでいる企業では人材をどのような雇用形態で採用し、どのような責任下で業務を割り当てているのか、

また、導入時に起こった障壁や課題等、導入前のプロセスから導入後、運用フェーズにおける取組から課題までを調査したものとなっております。

 

市場から見る実際のインサイドセールス導入状況

インサイドセールスはまだまだ市場ライフサイクルにおいては導入期にあります。多くの導入済み企業は、イノベーター、アーリーアダプター=先駆者として試行錯誤しながら成果を追求しています。

 

本市場調査では製造業、情報通信業の経営者、営業部門責任者を中心に309名のご回答者様にご協力頂きました。その結果として、既に導入済みが23.7%、導入検討中が8.7%で、32.4%の回答者様が既にインサイドセールスを導入、もしくは検討を進めていることが分かりました。

 インサイドセールス検討状況

 

みなさまはこの結果を高いと考えるか、低いと考えるか、どちらでしょうか?

弊社は想定以上に導入を進めている企業が増えてきている、と考えています。もちろん導入済の中には営業部門が兼務で担当していたり、まだ組織化していなかったりなど、多様な回答はあります。しかし、それでも経営者・部門責任者がインサイドセールス導入を意思決定して進めている、という会社が32.4%あるという事実は、いよいよ市場普及も成長期に入ってきたのではないか、と思わせる結果です。

 

 

デジタルとの高い相関関係が判明したインサイドセールス

次に、インサイドセールスとデジタルマーケティングツールの相関についてのサマリーです。

今回一番驚いた結果はMA(マーケティングオートメーションツール)とインサイドセールスの相関関係でした。

  MAの認知度

皆様はマーケティングオートメーションツールをご存知でしょうか。

本記事では説明を割愛しますが、マーケティングオートメーションツールの導入可否が、インサイドセールスの取り組みと高い相関関係があることが判明しました。

 

つまり、マーケティングオートメーションツールを活用した、デジタルマーケティング活動を行っている企業は高い確率でインサイドセールスを導入し、その逆ではほとんど導入がされていないということです。インサイドセールスにおけるデジタルマーケティングの有効性については別記事にてご紹介しますので割愛します。

 

 

導入企業に聞いたインサイドセールス導入のきっかけと目的

では、実際にインサイドセールス導入はどのようなきっかけなのでしょうか。

ポイントは、経営層からの導入意思決定ではなく、現場サイドからの提言、ボトムアップによる導入が多いということです。

 

その中でも、最も多い理由は、概ね営業活動効率の向上に集約されます。営業はどうしても外出による対応に時間を要してしまいます。そのため、インサイドセールスと分業化することによって訪問による商談・受注精度を高めよう、というトレンドが強いようです。

 

 

インサイドセールス職種のトレンド

それではインサイドセールスはどのような形態で雇用され、どのような職務についているのでしょうか。実に70%以上が正社員で雇用され、外勤営業と同じように業績責任を持っているケースが最も多い結果となりました。

ただ業績責任を持たずに分業しているケースも多く、まだまだインサイドセールスと一口にいっても業務内容は多様です。
インサイドセールスの雇用形態

逆にインサイドセールスキャリアに興味ある方々は、実際にインサイドセールスを募集している求人がどのような業務範囲、役割を定義しているかをしっかりと確認した方が良いということになります。

そうでないと入社後に、こんなはずではなかったということに、なりかねません。

 

インサイドセールスが活用しているテクノロジー

インサイドセールスの主要業務は電話とメールによる営業活動となります。 

 インサイドセールスの主要業務

ただし、マーケティングオートメーション導入企業ではインサイドセールスがランディングページを制作したり遠隔会議ツールを活用したりなど、テクノロジーを活用して多様な業務を行っているようです。

実際にインサイドセールスがどのようなテクノロジーを活用しているかの詳細については、別記事(リンク)を参考にしてください。

弊社が理想とするインサイドセールスでも、コンテンツ制作を業務の1つとしています。詳細は別記事にて記載いたしますが、市場のインサイトと多く触れるインサイドセールスだからこそ作成できるものがあると考えています。

 

インサイドセールス導入前、導入後の障壁・課題

インサイドセールス導入前の障壁、そして導入後の課題については共通して人材・ノウハウの不足が大多数の回答として挙がりました。

インサイドセールスはまだまだ市場導入期から成長期の段階にある為、そもそもノウハウを持ちリードしたり、高いレベルで実行したりする人材自体がいないということが要因と考えられます。

さらに、経験者は外資大手が破格の給与を提示して、囲い込んでしまうため、ますます経験者の獲得は困難になっています。

また、導入後の課題として関連して上がったのが育成や研修機会の提供です。

 

さらに注目すべき課題は、人材のモチベーションマネジメントです。

インサイドセールスは外勤営業に比べると電話をかけ続けるといった辛い業務をイメージされている方もまだまだ多いです。

そのため、従事する方には、具体的にどのような業務を行うのかをしっかり説明すること、そしてインサイドセールス業務のやりがいや意義を定義して見出してもらう、といったこともポイントになるのではないでしょうか。

 

インサイドセールスの成果指標トレンド

インサイドセールスの成果指標としては営業活動における訪問後の商談化率、受注率が上位2つの回答としてあがりました。

導入の目的として営業活動効率が挙がっているので、活動効率向上を商談化、受注効率がどの程度改善されているかで、成果を管理する企業が多いようです。

 ただし合わせて導入前課題として評価、成果指標をどのように立てたら良いか分からない、という課題が多く上がっていたため、まだまだ模索しながら活動している会社もありそうです。

  

インサイドセールス導入の目的

 

導入企業におけるインサイドセールスの成果状況のまとめ

次に、インサイドセールス導入後の成果がどのように表れたかをまとめます。こちらは成果指標と同じく、商談化率、受注率の向上があがりました。

ただし注意点として受注率の向上を組織内で実感するには、6年以上と他の指標と比較して、長期間を要する回答が多くなっています。もし営業組織変革を目的としてインサイドセールスの導入を検討するなら、可能な限り早めに着手することが必要かもしれません。

  

インサイドセールスの責任領域

 

今後、インサイドーセールス組織を立ち上げた際に、成果に関わる注目すべきポイントとしては、評価指標とインサイドセールスの業績責任を挙げたいと思います。

上記グラフの通り、インサイドセールスに業績責任を持たせている場合ほど顕著に成果が高まったと回答した会社が多いことが特徴となります。

 

逆に業績責任を持たせずに、商談獲得数のみを役割とするといった分業が最も成果が出ていると回答した会社が低い結果となりました。導入時にインサイドセールスにどのような責任の下、どんな業務を割り当てるかが重要なポイントとなりそうです。

 

市場調査からわかるインサイドセールス導入時のポイントと注意点

最後に、市場調査結果からインサイドセールスを導入検討する場合に考慮すべきポイントを以下にまとめました。

 

・ インサイドセールスを導入している企業は、合わせてデジタルマーケティング活動を推進することがトレンドである。

・ 導入目的は基本的に営業活動効率の向上

・ インサイドセールス導入、運用はインハウスで推進している会社が大多数

・ インサイドセールス導入時、後の課題は共通して人材・ノウハウの確保であること。合わせて、人材のモチベーションマネジメント施策も検討すること

・ 業務内容は電話とメールが主ですが、マーケティングオートメーションツールやSFA、遠隔会議ツールを使用するなど、幅広い業務内容を行っているケースも増えてきている

・ 導入成果は、インサイドセールスに業績責任を持たせることで高まること

・ 営業効率(商談化率、受注率)の向上を実感するには数年の長期間を要すること

 

このカテゴリーでは、インサイドセールスについてのニュースや、考えるべきポイント等、経験を活かした記事をアップロードしていきますので、楽しみにお待ちください。